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いまの私も未来の地球も幸せに④産地本来の自然の力で育った旬の花「スローフラワー」という選択

持続可能な環境・社会・経済を目指すサステナビリティという考え方が世界中で広がっています。このコラムでは、毎日の衣・食・住・遊を幸せにするサステナブルアクションを紹介します。今回は、環境に負荷をかけない方法で栽培した旬の花を地産地消することを目指す「スローフラワー」ムーブメントを取り上げます。

目次

  1. 私たちの人生を彩る美しい花は、環境問題を抱えている
  2. サステナブルな方法で栽培する旬の花を地産地消する「スローフラワー」ムーブメント
  3. 日本でも、スローフラワーをコンセプトとする花農家や生花店が生まれている
  4. おわりに

私たちの人生を彩る美しい花は、環境問題を抱えている


フラワーショップに並ぶ色とりどりの美しい花。結婚式の花嫁のブーケ、記念日に贈る花束、母の日のカーネーション… 私たちの人生のワンシーンを彩る花々が、どこでどのように育って、私たちのところへやってくるのか、知っていますか。

実はいま、美しい花が育ち、私たちのもとへやってくるプロセスで、様々な環境問題が生じています。例えば、花を安定供給するためにエネルギーを使って温室栽培している、規格に合わせた花を育てるために農薬や化学肥料を大量に使用して環境や花農家に負担をかけている、海外から空輸される花は輸送にともなう環境負荷が高い、規格外品や売れ残りなどの大量の花が廃棄されているなど、花の生産・流通過程では大きな環境負荷がかかっているのです。

そんな花を取り巻く環境負荷を減らすべく、花の栽培法や消費のあり方を見直す「スローフラワー」ムーブメントが、世界で大きな広がりをみせています。

サステナブルな方法で栽培する旬の花を地産地消する「スローフラワー」ムーブメント


「スローフラワー」ムーブメントは、花の地産地消を応援する取り組みとして2000年代に米国で始まりました。米国では切り花の約8割が輸入であるという背景から、スローフードに触発されて、環境に負荷をかけない方法で栽培されるローカルな旬の花を地元の消費者が購入する運動が提唱されたのです。

スローフラワーの理念は次のとおりです。注1
・花が本来咲く季節(花の旬)を尊重する
・地元で栽培された花を調達し、花の輸送による環境負荷を削減する
・認証ラベルによって花農家を支援する
・農薬や化学肥料を使わないなど、働く人や環境に負荷をかけない栽培法を推進する
・花き注2産業における廃棄と化学製品の使用を削減する

現在では、スローフラワームーブメントは米国や欧州に広がり、花の地産地消の認証ラベルが作られたり、スローフラワーを掲げる花農家やフラワーショップが人気を集めたりしています。

日本は切り花など観賞用の植物の約9割が国内生産であり、輸入が大半を占める米国や欧州とは状況が異なる部分もありますが、出荷規格や供給過多による花の廃棄は、日本の花き産業が解決すべき課題となっています。そこで、季節の花を環境に負荷をかけない方法で栽培して地産地消する、そして花の廃棄を削減するスローフラワーの考え方が、日本でも注目されています。

日本でも、スローフラワーをコンセプトとする花農家や生花店が生まれている


欧米を中心とするスローフラワームーブメントの広がりを受けて、日本でもスローフラワーの理念に共鳴する花農家やフラワーショップが生まれています。また花の廃棄削減の取り組みは、ブライダル業界でも始まっています。

– four peas flowers
スローフラワームーブメントを日本で広めている神奈川県藤野の花農家「four peas flowers」は、本来その花が咲く季節を大切にしながら、農薬や化学肥料を使わない露地栽培で、旬の花を種から育てています。売ることが難しいものは天然染料や堆肥にするなど、花の廃棄削減にも取り組んでいます。藤野近郊、青山ファーマーズマーケットほか各地のマルシェへ出店しています。

– Green Field Flowers
埼玉県で有機農業を営むサンファーム高橋が手がけるオーガニックフラワー農園「Green Field Flowers」は、農薬や化学肥料を使わずに季節の花を育てています。オーガニックフラワーブーケのサブスクリプション販売、青山ファーマーズマーケットへの出店、農園での花摘み体験などを行っています。

– オーガニックフラワーショップわなびや
東京・西巣鴨のフラワーショップ「わなびや」は、無農薬・減農薬・自然栽培など環境負荷低減に取り組む花農家の花やハーブを販売する“安心なお花”の専門店です。オンラインショップではお花の定期便を購入することもできます。

– THE LITTLE SHOP OF FLOWERS
東京・原宿の生花店「THE LITTLE SHOP OF FLOWERS」は、生花とドライフラワーをミックスしたフラワーアレンジ、季節の花を押し花にしたオリジナル押し花フレーム、廃棄になってしまう花を天然染料に変えて染色した服飾品などを販売しています。

– テイクアンドギヴ・ニーズ「アフターフラワーキャンドル」
ブライダル大手の株式会社テイクアンドギヴ・ニーズは、結婚式場の会場装花を使った「アフターフラワーキャンドル」を全国の結婚式場で販売しています。まだ美しい状態にも関わらず廃棄されてしまう会場装花をアロマキャンドルにすることで、結婚式の思い出とともに長く楽しむことができて、花の廃棄削減にも貢献できます。

おわりに

美味しくて健康に良い旬のオーガニック野菜をいただくように、多少曲がっているかもしれないけれど、産地本来の自然の力で育った旬の花のワイルドな美しさをいただく。ドライフラワーやフラワーキャンドルにして枯れゆく花も楽しむ。そんな花との付き合いができたら、花を愛でる楽しみがもっと広がりそうです。結婚式や記念日など人生の大切な日に自分や誰かのために花を選ぶとき、その花の育った背景にも想いを馳せてみませんか。

(注1) https://slowflowersjournal.com/a-slow-flowers-manifesto/
(注2) 「花き」とは、切り花や鉢花などの観賞用の植物を指します。

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