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いまの私も未来の地球も幸せに⑪ 母の日には、まだ美しいのに捨てられる花を贈って「フラワーロス」を減らそう

持続可能な環境・社会・経済を目指すサステナビリティという考え方が世界中で広がっています。このコラムでは、毎日の衣・食・住・遊を幸せにするサステナブルアクションを紹介します。今回は、花の生産・流通・販売の過程でまだ美しく咲いている花が廃棄されてしまう「フラワーロス(Flower Loss)」を取り上げます。

目次

  1. 毎年、母の日の後に大量のカーネーションが廃棄されている
  2. コロナ禍を契機に「フラワーロス」削減の仕組みづくりが活発に
  3. 捨てられる花の魅力を生かした商品やイベントが生まれている
  4. おわりに

毎年、母の日の後に大量のカーネーションが廃棄されている

毎年5月の第2日曜日にやってくる、母の日。街中の生花店にはカーネーションが溢れんばかりに並びます。この日は子どもから大人までたくさんの人が生花店を訪れ、一年でもっとも花が多く売れる日と言われています。

しかし、母の日の翌日には、売れ残ったカーネーションはほとんど需要がなくなります。生花店にとって母の日の需要予測は難しく、母の日の後には大量のカーネーションが廃棄されているという現状があります。

切り花や鉢花などの観賞用の植物を扱う日本の花き産業は、観賞用として十分に楽しめる花を、出荷規格や供給過多などの理由から、生産・流通・販売の過程で大量に廃棄してきました。日本では、収穫された花の2割が茎の短さなどの理由で規格外となって市場に出荷できず廃棄され、生花店が仕入れた花も売れ残りなどにより3割が廃棄されると言われています。

こうした、花の生産・流通・販売の過程でまだ美しく咲いている花が廃棄されてしまうことを「フラワーロス(Flower Loss)」と呼びます。フラワーロスは、花き農家や生花店にとって大きな経済損失であると同時に、廃棄にともなうCO2排出などサステナビリティの課題でもあります。例えば、母の日に人気のカーネーションは、65%が南米コロンビアなどから輸入されており注1)、廃棄だけでなく輸送の環境負荷も大きくフラワーロスの削減が急務です。

また消費者に届く前に廃棄される花に加えて、結婚式やイベントなどで短時間使用された花が、まだ十分楽しめる状態にもかかわらず大量に廃棄されるフラワーロスの問題も、サステナビリティ意識が高まる中で解決すべき課題として注目されています。

コロナ禍を契機に「フラワーロス」削減の仕組みづくりが活発に

日本では、コロナ禍に結婚式やイベント控えなどによって花の需要が大きく落ち込んだことで、行き場のない花が大量に発生しました。これをきっかけにフラワーロス問題が広く認知され、花き農家と消費者を直接つないで規格外の花を販売できるプラットフォーム、安定した花の需要を生む切り花のサブスクリプションサービスなど、フラワーロス削減に向けた仕組みづくりが活発になっています。また農林水産省の花いっぱいプロジェクトなど、毎日の暮らしに花を取り入れる習慣を広めて、安定的な花き需要を生み出す取り組みも広がっています。

例えば、2020スマイルフラワープロジェクトは、規格外や出荷キャンセルなどで花の生産者がやむなく廃棄している花を救出するため、廃棄予定の花を花き農家から直接買い取って消費者へ販売するプラットフォームです。茎の長さが規格に満たないために出荷できないバラ、花数が少なくて規格に満たないスプレーカーネーション、需給バランスの崩れで咲き時期に出荷できないカスミソウなどをオンライン販売しています。

また、日本初の花の定期便サービスbloomeeは、全国の提携生花店から定期的に季節のお花がポストに届く、花のサブスクリプションサービスです。bloomeeは、茎の長さや曲がりに難がある花も適正価格で買い付けることでフラワーロスを削減し、サブスクリプションサービスとすることで生産者や生花店の安定的な収益源をつくるとともに売れ残りによる花の廃棄を削減しています。現在では、こうした花のサブスクリプションサービスは広がりを見せています。

フラワーロス削減の仕組みづくりに加えて、母の日に一極集中する花の需要を分散させる「母の月」という提案もみられます。日本の花き市場は、母の日・彼岸・盆・正月に花の需要が集中するため、開花タイミングが合わないなどによってフラワーロスが発生しやすいのです。そこで、5月1ヶ月間を「母の月」として花を贈るという新たな習慣をつくり、母の日に開花時期が合わずロスになる花を減らしたり、配送負荷を平準化したり、売れ残りによるロスを減らしたりすることが期待されています。

捨てられる花の魅力を生かした商品やイベントが生まれている

現在では、花き農家直送の花の定期便や市場で買い手がつかなかった花を購入できるECサイト、規格外の花を購入できる生花店、捨てられる花をドライフラワーや染料にアップサイクルした商品、廃棄予定の花を活用した体験イベントなど、フラワーロス削減に気軽に参加できる多様な機会が生まれています。

RIN Flower cycle marcheは、「花のロスを減らし花のある生活を文化にする」をミッションとする株式会社RINが運営する花のオンラインショップです。バラ農家やユリ農家から直送される花の定期便、市場で買い手のつかなかった花、廃棄される花を加工したドライフラワーなどをECサイトから購入できます。

東京・白山の生花店Hanavieは、市場に出荷されず廃棄されてしまう規格外の花を生産者から買い取り「プラスフラワー」と名付けて販売しています。店頭だけでなく、カフェや商業施設などで規格外の花を販売するイベント「ハナスク」やオンラインショップでも規格外の花を購入できます。

LOSS IS MORE GINは、毎年5月の母の日の後に大量に廃棄されるカーネーションを、花の香りを生かした消費期限のない蒸留酒に生まれ変わらせた商品です。母の日の後に廃棄されるカーネーションに、恒常的にロスが発生しているバラやユリをブレンドして、フラワーロスを削減しています。

株式会社テイクアンドギヴ・ニーズでは、子どもたちに学びと体験の場を提供するT&Gキッズプロジェクトを、毎年夏休みに実施しています。結婚式場で働くフラワーコーディネーターの仕事を体験する「ブーケづくり体験」では、花市場で売れ残り廃棄予定だった花を使用して、資源の大切さやゴミ削減の必要性も伝えています。また、同社の結婚式で会場装花として使用された廃棄予定の花から染料を抽出して生地を染めたボタニカル・ダイ ドレスを制作し、レンタルしています。さらに、東京・渋谷のTRUNK(HOTEL)では、結婚式やイベントの装飾で使用したまだ美しい状態の花を購入できるソーシャライジングフラワーマーケットを、月曜日を中心に定期的に開催しています。

おわりに

大切に育てられて美しく咲いた花が、美しいまま捨てられるフラワーロス。今年の「母の月」には、あなたの大切な人も、花の生産者も、そして花も幸せになれる贈りものを選びませんか。

注1) https://www.maff.go.jp/j//seisan/kaki/flower/attach/pdf/index-50.pdf

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