One Heart Wedding

Documentary Novel

感動の実話を小説形式でご紹介いたします。


母の日の約束

ご新郎は、とてもシャイな人でした。

ほんとうは、お母様のことが大好き。

でもこれまで、母の日にプレゼントしたことなんてありません。
ありがとうの言葉だって、恥ずかしくて言えないとのことでした。

「何とかしてあげたい。
結婚式の当日に、お母様とご新郎がもっと近づけるよう、
何か温かい演出ができたら…」

そう思ったプランナーは、ご新郎ではなく、
ご新婦へひとつ、お願いをしてみました。

「お母様のほうがご新郎をどう思っているか、探ってきてください」

お母様とご新郎、おふたりの距離を縮めるためのサプライズ。
実現に向けた、素材探しの始まりです。

依頼を受けたご新婦は、お母様をお食事に誘い、
何気なく、尋ねてみました。

「ところでご新郎は、どんな人でしたか?」

「実はね、これが宝物なの」

そう言いながらお母様が取り出したのは、宝箱でした。
入っていたのは、息子さんであるご新郎からのお手紙。
そこには、こう書いてありました。


『ぼくがおとなになったら、おかあさんに、きらきらのほうせきを、プレゼントしたいです』


「その言葉がもう、嬉しくって、嬉しくって」
・・・お母様は、まるで昨日のことのように話されたといいます。

「これは貴重なヒントかもしれない」
ご新婦は翌日すぐ、手紙の件を伝えました。

ところが話を聞いたプランナーは、まだ慎重です。

「ご新郎のほうは、手紙を書いたこと、覚えているのだろうか」

確認のために、こんどは自らご新郎にたずねてみました。

「もうすぐ母の日ですけど、お母様に式の当日、
プレゼントするなんて素敵ですよね。
何かお品物の手がかりとなるような、思い出はありませんか?」

しばらく考え込んだ、ご新郎。出てきた言葉は・・・

「・・・そうですね、幼稚園の時に宝石をプレゼントしたいなんて、手紙を書いたかなぁ」


つながりました!


「それならその時の約束を、披露宴で果たしましょうよ」と、
ここで初めてご提案となりました。

ご新郎も、提案を快く受け入れて。
後日、ご新婦といっしょに宝石店へ行き、
プレゼントを選ぶ風景をご新婦がビデオに撮りました。


そして披露宴の当日。

「お母様、ご覧になっていただきたいビデオがあります」と司会者。
流れたのは、ご新郎の宝石店での買い物風景。
ご新婦が撮影したものです。

「これが似合うかな・・・」

スクリーンの中のご新郎は、とっても楽しそう。

でもお母様は、すぐには事情がわかりません。

続いて、ご新郎の言葉が、しずかに会場に響きました。


「おかあさん、覚えてますか。
幼稚園のころ、キラキラの宝石をプレゼントしたいって、言いましたよね。
約束、いま、はたします。
25年も待たせてしまってごめんなさい」


前に呼ばれたお母様。
ご新郎は、ご自分で選んだダイヤモンドのネックレスを、
首にかけてあげました。

鳴り止まない拍手。

お母様は、涙をこらえきれずにいます。


次に司会者は、ご新郎のほうに語りかけました。

「このお手紙、覚えておられますか。
お母様が今日まで、大事に大事に、とってあったんですよ」

取り出されたのは、もう茶色くなった紙。
ひらがなばかりの、懐かしい筆跡。


『・・・おかあさんにきらきらのほうせきを、プレゼントしたいです』


小さかった頃の記憶が甦ったのでしょうか。
こんどは、ご新郎が涙する番になりました。

そんなふたりを見ながら、ご新婦も目頭をおさえています。


ネックレスをかけたお母様には、あっちでもこっちでも写真撮影の声がかかって。
もう会場の主役と言えるほど。

会場中の人が、こころひとつに、つながったように見えました。


〜One Heart Wedding〜

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