One Heart Wedding

Documentary Novel

感動の実話を小説形式でご紹介いたします。


お父さん安心して。私、しあわせになるよ。

Capter1 突然のメール

それは、挙式の2カ月前のことでした。

夜の10時。
ウェディングプランナーへ、ご新婦からのメールが届きます。

「元気だった父が突然危篤になり、余命数日と宣告されました。
何とか私のドレス姿だけでも、見せてあげたいのですが」

ウェディングプランナーは、すぐ、スタッフの手配にかかりました。

ドレスショップとヘアメイクの担当者に連絡。
カメラマンもつかまりました。
偶然にも翌日に挙式があり、スケジュールがおさえられていたのです。

さらにウェディングプランナーは、ご新婦へこんな提案をしました。

「せっかくですから、病院で式を挙げましょう」

人前式ならできるはず。
お父様にとって大切な時間、少しでも活かそうと考えました。
ただ、お父様はもう寝たきりの状態。
結婚証明書に手形を押していただき、参列の証にすることに。

式場のスタッフにも事情を伝え、
明日の準備が整いました。


Capter2 病室の誓い

病室の壁には、鶴をあしらったタペストリー。
お父様にはモーニングを着て、車いすに座っていただきました。

それまで言葉も話せなかったお父様、
ご新婦の姿を見て、驚くほど元気になられたのです。

お父様の前に、おふたりが並びます。
ご新郎はタキシード。ご新婦はもちろん、純白のウェディングドレス。


お父様は目の前の新郎新婦を見て、静かに微笑まれています。
そしてご新婦のお顔に視線を合わせながら、ひと言。

「綺麗だよ」

ご新婦も、ふだんと同じように言葉を返します。

「ありがとう。お父さんも、格好いいんじゃないの」

その言葉を聞いたお父様、もう、精一杯の照れかくし。

「いつもだよ」

まるで式場での、親子の会話といっしょです。
その瞬間、すべての過酷な現実が消え去ったかのようでした。

続いては、ご新郎の誓いの言葉です。
「お父さん。彼女を一生かけてしあわせにするので、安心してください」

「期待してるからな」、とお父様。
ご新郎は、お父様の手を握りしめました。

お父様も、しっかりと握り返します。
ただ表情は、ちょっと不満そう。
こうした姿は、最愛の娘を送り出す父親そのものです。


病室での式は、無事に終わりました。
その翌々日、お父様は息を引き取られました。


Capter3 三人で歩くバージンロード

結婚式の当日。

チャペルのドアが、おごそかに開きました。
花嫁の入場です。

花嫁の隣にいるのは、お母様。
手には、額に入った写真がしっかりと握られています。

ご新婦とお母様、そして写真の中で微笑むお父様。
バージンロード歩くのは、三人です。


「お父さん、私、しあわせになるよ」

ご新婦は、心の中で語りかけました。


「綺麗だよ」 「期待してるからな」


あの日の、お父様の言葉をかみしめながら。


〜One Heart Wedding〜

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